私たちの売る『商品』はいずれ誰かの宝物になるかもしれない

私たちの売る『商品』はいずれ誰かの宝物になるかもしれない

私たちアパレル販売員は、

自分たちの売る商品を大切にできないことがあります。

 

売れないくせに大量に作られたものが在庫になり、

ストック整理するときに棚から溢れたりしてイラッとします。

 

売れ残り続けた色欠けサイズ欠けした商品なんて売り場でも邪魔に感じることもあるし、

例え「商品はお金」と解っていても、

売れなければゴミになるのだし、

その存在を大切に扱うことを忘れがちになります。

 

私自身は、

商品とは、

お客様を良く見せるもの

お客様の気分を盛り上げるもの

場合によっては生活や人生を彩るもの

という認識でした。

 

それは全然間違ってないし、

アパレルで働く限り、ずっと私の中枢にある気持ちです。

 

ただ、それだけではないということに、

アパレル歴21年目にして気づかされたことがあります。

売った商品からお客様にストーリーが発生することもある

私たちの店では、朝、毎日一人が、

何でも良いので1分間喋るということをしていた時期がありました。

 

その日は、20代の男の子の番でした。

普段口数が少ない、優しい子です。

私はこの男の子のお話を知って、

慣れきっていた仕事の大切な一面に改めて気が付き、衝撃を受けました。

 

話の内容はこうでした。

 

数ヶ月前に、

男の子がおじいちゃんの家に遊びに行ったときのことです。

 

近くの海に遊びに行くことになったときに、

おじいちゃんが「暑いから、自分の帽子を持って行きなさい」と言ったそうです。

それは麦わら帽子で、

おじいちゃんには申し訳ないけど、

男の子は「こんなダサい帽子かぶらないし要らない・・・」と思ったそうです。

アパレルで働いているオシャレ男子なので尚更そうだろうなと思いました。

 

被る機会なんて、多分無いだろうな・・・と思いながらも、

その場ではおじいちゃんに気を遣う形で

帽子を貰っておいたのです。

 

すると、

その2週間後に、おじいちゃんは亡くなったそうです。

 

そのとき、「ダサいし要らない」と思っていたおじいちゃんの帽子がとても大切なものに変わった、

というお話です。

そのお話には更に続きがありました。

 

自分たちの売っている商品はすべて、

安いとか高いとか、オシャレとかダサいとかじゃなくて、

本人や、その大切な人の宝物になる可能性がある。

販売する私たちも、それを踏まえた上で接客及び商品管理をしてほしい、

男の子は涙で声を詰まらせながら話しました。

 

その場は拍手に包まれて、

接客が苦手なスタッフももらい泣きをしていました。

 

私もその話を知り、衝撃を受けました。

さすがに商品を売るだけで終わり、とは思っていませんでしたが、

商品を身に着けたお客様が楽しくなったり褒められたりして満足される、

というところまでしか描けていなかったからです。

 

しかし、『人が商品を買う』という行動には更にその先がありました。

もしもその本人が亡くなったり、

転勤や引っ越しなどで簡単には会えない環境になったとき。

その人を思い出すもの。

その人の温かみや気持ちが込められたもの。

それが私たちが売っている『商品』です。

 

「商品」がお客様の手に渡る限り、

「商品」は私たちの手を離れても、

場合によっては買った本人の手を離れても、

人の気持ちを動かしたり、幸せにしたり、時には慰めたりする可能性を秘めています。

 

例え私たちが商品に想いなんて込めなくても、

買った人や貰った人の想いが込められて、

その人たちにとっての商品の価値は上がっていきます。

 

だから、他人の宝物を粗末に扱うことだけはしてはいけないな、と。

亡き母を思い出すたくさんのモノと私

私自身、数年前に癌で母を亡くしました。

母がしていたエプロンや、亡くなる前にいつも着てたコート。

 

母が何の気無しに買って来て「可愛いでしょう」と、見せてきた安い雑貨や、

独り暮らしを始めて熱を出した私の家に看病に来て置いて帰ったタオル。

「自分の葬儀で身につけるように」と買ってくれた喪服と真珠。

それぞれの品物から、すぐにそのときのエピソードを思い出します。

 

何度引っ越しをしたり断捨離をしても、なかなか捨てられず

私もお守りのようにずっと持っています。

結婚したときにお祝いだからと買ってくれたたくさんの家具や家電は今も私と一緒に暮らしています。

旦那だけ居なくなりましたが(笑)

 

一緒に買いに行ったときのこと、組み立てたときのこと、

ひとつひとつに思い入れがあるので、

独りで身軽になったにも関わらず処分できない、したくない。

引っ越す必要があるときには、

家賃は高いですが広い家を借りては住み続けています。

 

近年、モノを持たない暮らしが称賛されていますが、

亡き人や離れる人、大切な人から受け継いだモノが、手元にあり、

視界に入るときには自分を幸せな気分にさせてくれることも多々あります。

 

実際、母との思い出の家具や、思い入れのあるものに囲まれていると、

何とも温かい気持ちになります。

 

その環境を維持する、維持できるような広い家に住み続ける!

というのが私が働く上での大きなモチベーションにもなっています。

まだまだ利用者は多いアパレル実店舗。その役割。

 

売る側にはそこまでは描けない、という小さなストーリーは、

安い・高い、オシャレ・ダサいに関係無く、たくさんの人の間で発生しています。

 

オシャレなセレクトショップに迷い込んで帽子を買うおじいちゃん、

息子さんの新生活の洋服を買いにくるお母さん、

離れ離れになる同僚にネクタイを買う人、

いつも決まった好きな色の服ばかり選ぶ女性・・・

 

あの人が買っていったものが、

いつまでも誰かのそばに居て鮮明に記憶に残るかもしれない

 

そう思うと、より一層、

「その人らしいもの」や、お客様が「買って良かった」「貰って嬉しい」と思うもの、

上手く表現しにくいですが、、、

なるべく本人やその大切な人たちをも満たし、

記憶に残り、長く愛されるような商品を提供するのが私たちの役割ですね。

 

どんなに生活が苦しくなっても、

まだ人は服を買いますし、プレゼントすることもあります。

そのとき、お客様は『何で』『今』それを買おうとしているのか?

 

私たちがそれを聞いて、

それならこういうのがあるよ、という提案をして、

もしかするとお客様ご自身では見つけきれなかった素敵なアイテムをご紹介できるかもしれません。

 

プレゼント選びのときは、旦那さんや息子さんのお話をしてくださる人も多く、

話しているうちに、

お話しながらお客様自身の気持ちが大きくなっていくのを感じ取ることがあります。

私はその想いを乗せたプレゼントを選びたい、と思います。

ときにはそれがお客様自身の計画を超えたものでも、

 
自分では選べませんでした、ありがとうございます!色々お話できて、楽しかったです。
という嬉しいお言葉を貰うことも多々あります。
 
そして、商品を探しながらも、
その人や場面にまつわるエピソードを聞けるのは私たちにとっても
楽しく、販売をする上で大事な時間となります。

 

「ネットで買う時代」と言われて長いですが、蓋を開けると、まだ8割の方が実店舗を利用しているのが現状です。

 

お客様が家で一人で、

ネットでクリックボタンを押す、とう買い物だって勿論できます。

 

だけど、お店に来るお客様には、

私たちだからお手伝いできることもあります。

私たちは素晴らしい商品とそれ以上のものを売っています。

 

こんな時代だからこそ、

人々の心を満たすモノを提供できたら良いですよね。

 

私たちはそれが出来る可能性を、接客の数だけ秘めてると思うと、

接客に対する見方も変わってくるのではないでしょうか。

 

そして、いつか誰かの宝物になりうる大切な商品、大切に扱おうと思いました。

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