『アパレル店員と顧客様との距離感』こうなると辛い!
過去、私は『顧客主義』の店で働いていました。
1日の入店が10人以下、でも売らないとお店は成り立たない。
例えば百貨店の店舗の販売員、
もしくは集客がほとんど無い路面店で働く販売員も同じような経験をお持ちではないでしょうか。
そんなときに顧客様を作るように推奨され、
顧客を作る力、顧客との関係を継続する力というのは
今まで以上に評価されやすくなっていると言えます。
しかし、日本独特のおもてなし精神がサービス業を追い詰めてる一面もある、
それに気づいたのがそんな『顧客主義』に偏った店で働いた経験からでした。
大前提として、顧客様はとても大事な存在で、当然、感謝もしています。
そもそも私は自分の好きなお客様しかお付き合いしないので、
顧客様に自分の提案力を気に入って支持されているというのはとても嬉しいことです。
顧客様を多く持つ私は売上もトップクラスで、全国的にも目立った存在でした。
7年勤めたお店を去る時には、
毎日のように顧客様が殺到してお手紙やプレゼントの山、
自分の必要性や仕事に対する誇り、やりがいを噛みしめていました。
「お疲れ会」も開いていただいたりと、それはもう販売員冥利に尽きます。
ところが、辞めた途端にふっと、強烈な無気力に襲われました。
2週間くらい、家族以外、誰とも連絡を取らない日々。
もうずっと一人で居たい、家から出ることも無く1日中欝々とした気持ち。
ただボーっと過ごし
「これがいわゆる燃え尽きか・・・」と思いました。
そんな中で、「人と接すること」がどうにもこうにも面倒になっていったのです。
そして、あんなに誇らしかった日々のことも、思い出しては強い倦怠感しか無く、
得意であるはずの接客業なのに、
今後自分は出来ないのではないかと思ったほど
他人と接する仕事に嫌悪感まで感じました。
急に無気力に。燃え尽きたのか??
冒頭で触れたように、顧客様一人一人は、私が自ら選んだ良いお客様がほとんどです。
楽しいのに、幸せなのに、なぜそうなったのか。
入店が極端に少ない店は、
特定のお客様との信頼関係を何年も続け、
日々、顧客様にご来店頂くようにあらゆる手法でご連絡します。
顧客様が自分をたずねて来てくれたら
例え自分が休憩中でも、何事も無いように売り場に戻り、1時間2時間と接客をします。
当然、退勤時間直前に来られても接客、閉店後に及んでも接客することも多々ありました。
きっと従事者として「断りづらい部分」で見えないストレスを感じていたのでしょう。
そのストレスにも気づかず、
それが当然だと受け入れ、
がむしゃらに目の前の顧客様の満足を考えて接していました。
顧客様は服を買いに来るだけではありません。
私とお話をしたり、褒めてもらったり、元気づけてもらいたい、そんな人もたくさん居ました。
こちらもそんな要望に応えるために私も、
話の聞き方、相槌、質問、とにかく集中して神経を使うのです。
それでも、仕事は売り上げを取ること。
ただお話を楽しむだけでなく、
それを相手に悟られないように売上に繋げないといけないのがまたシビアでもあります。
楽しい一方でシビアな面もあるのはどの接客でも同じですが、
顧客様に向けてこのような接客をしていると、接客時間が1人につき1時間~2時間はかかるのです。
それを毎日数人こなしていたら?
もう、サービス疲弊を起こします。
今思うと大変な労力を使っていました。
そこで得た顧客様との付き合い方は・・・
・接客時間は長くかかっても1時間に抑えよう。
接客時間の長さはお客様も(悪い)癖になる。
そのために意識しながら「会話を楽しむ時間」と「売る時間」の時間配分を考えよう。
・プライベートな付き合い(連絡・食事)はやめよう。
遠慮が入るので疲れる。
お互い利害関係が無くなってから友人になるのはアリ!
・DMなどでのアプローチは極力しない。
自分から呼んでしまったがために期待を超える接客をしないといけないとプレッシャーを感じる。
・キャパを超える人数の顧客様は持たない。
月に2人3人が理想的。長く深く付き合うお客様は人数を絞る。
顧客様で売上を取っている販売員もまた『顧客様への依存心が強い』という一面もあります。
それによって必要以上に手厚くしてしまった顧客様がいつも120%の接客を求めてくる・・・
というループの繰り返し。
自分という販売員の必要性や喜びを感じることは出来ても、
一見良いことのように見えるため、
背面に潜んでいる莫大なストレスに気づけません。
しかし限界や反動はあるとき突然来るのです。
もう当時のような働き方はしたくないし、出来ない。
ただ、無理をしてる最中、自分では気づけないものなんだなと思いました。
「けっこうしんどいなぁ・・・」なんて思ってたら、
すでにだいぶ無理をしている可能性もあります。
アパレル店員を襲うストレスの病気『適応障害』 アパレル販売員も属するサービス業の人間にとって、 大変身近な病気『適応障害』。 販売員は『感情労働』であると言われます。 感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切[…]
顧客様を作らないで1年間働いてみた。
サービス疲弊をした私がその後転職し、
新しい会社では当然顧客様は1から作ることになります。
顧客様が居なくて売上は取れるのか?と心配はありましたが、
結論からいうと、売れました。
「はじめまして」のお客様と、会話をして、ちょっと和んで、商品をご紹介する。
短い時間で集中的に接客し、その場限りで一旦終わり!です。
顧客様へのサービスよりドライなので、
退勤時間も閉店時間も基本的には守れます。
現在は、
満足されたらまたお客様のほうから来てくれるわ、という軽い気持ちで接客というショートストーリーを、
エンターテイメントを楽しんでいます。
以前のような燃え滾る使命感みたいなものはありませんが、
とても心地よく、このスタンスであれば燃え尽きずに続けれるのではないかと思いました。
それも「顧客様をたくさん持つ」という経験の中で、
人との関わり方をよく学んだ賜物だと思います。
そしてそれは顧客様にがんじがらめにならなくても、
どのお客様を接客する際も役に立っているのです。
皮肉なことですが、燃え尽きるまで頑張った顧客主義のハイクオリティ接客が
身体に沁みついていつでも発動できるようになっていましたw
ここまで育ててくれた顧客様には感謝しつつ、
『特定のお客様に依存しなくても売上を取れる販売員』として、
いつでもどこでも誰にでも売れるスキルを身に着けることも
今後大きく評価されても良いと思います。
お客様の取り合いなんて、低レベル販売員がやること アパレルで個人売り上げがあるところは、 多かれ少なかれ、お客様を取った、取られたという問題があります。 とくに、お客様の来店が少ないショップなどは、 誰がどれ[…]