買い物って、単に“モノを買う時間”じゃなくて、
その日の気分を整える小さなリセット時間だと思う。
仕事で疲れていた日も、何気なく立ち寄ったお店で
誰かと少し話すだけで、心がやわらぐ瞬間がありませんか?
そんなささいな会話の中に、
「接客ってこういうことかもしれない」と思わせてくれた出来事があります。
お客さんが店員さんに心を開いていく様子を、実体験を元にお話しします。
①ドラッグストアで店員から、突然声を掛けられた日
私が彼を初めて見たのは、家のそばに新しくオープンしたドラッグストアのザグザグ店内。

こんにちは!資生堂のお得なキャンペーンやってます!!
最初はただただビックリした。
ドラッグストアの店員さんって、積極的な声掛けってしないよな・・・
40年以上生きて来た私でさえ、初めてだった。そのときの心境は、

おお、ビックリした・・・若いイケメンじゃん・・・話しかけてくるドラッグストアなんてあるんだ・・・ごめんそこまで資生堂買わないわ、色んなとこで好きなモン買うからさー
と、思った次第です。
それからも意識しないで毎日買い物に行ってたんですが、ある初夏の日。
私はアパレルなので少し先取りの服を着ています。
すると、レジをしてくれた例の若い男の子が、

今日、夏っぽいですね(^^)
と、一言サラリと言ってくれたのです。
まあ、接客業ならよくある一言かもしれない。
でも、ドラッグストアや飲食店など、日常の場所でそれを自然に言える人ってなかなかいない。
お客さんからしたら、ちょっと嬉しい小さなオマケがもらえたような気分。
例えるなら袋に入った小さな飴玉みたいなw
そして、「いつも行くから覚えられてたんだ・・・」と思った瞬間、適当過ぎる格好では行けなくなりました
そう思ったときから、私にとって既に、
買う場所であると同時に社交(また話しかけられる可能性がある)の場所に変わりました。
②接客業に超重要な『コミュニケーション力』と『印象』
あの「夏っぽいですね」の一言がきっかけで、
気づけば私は、彼が居る日、「あ、いるんだなあ。」と、なんとなく意識するようになっていた。
彼は、色んなお客さんに感じ良く世間話していて、不思議とみんなが常連に見えた。
初めて来たであろう人にも、何か聞かれたら親身に接客をしている。
その姿を他のお客さん(私)が目撃することで、

この人は、絶対話しやすいに違いない・・・
と、確信していく。
そして頻繁に行くので、商品のことか何かを聞いたのがきっかけで、レジで小話するくらいの間柄になった。
それがレジじゃなく品出しなどしてるときはほぼ世間話w
そんな彼の口癖は、

自分、社会人一年目なんで!
こんなに社会人であることを明るく肯定する若者もいるのか。
話を聞いていくと、
もともとスターバックスカフェでアルバイトをしていたということから、接客が好きなのだという。
そして学ぶことも大好きだから、コーヒー、スキンケア、健康など、
ある知識、得た知識、何でも説明してくれる。
貪欲に学び、真摯に仕事する。
そんな彼の働く姿は、自分の若い時と重なって、凄く応援したくなったし、
そのときの熱さを思い出させてもらえることもあった。
仕事が大好きな彼は、
ある日私のことを『バリキャリの女の人』と表現したので、気を良くして

実は私も昔は仕事が大好きでねぇ、君ぐらいのときはアパレルで店長やってたわ
という老害ムーブをしてしまった私にも、

えー!そうなんすか!
と、良いリアクションで聞いてくれて、『相手に合わせる』ことも上手なので、
そんなの世の中のジジババは一人残らずその若者を好きになると思いませんか(笑)
身なりもいつも綺麗にしていて『清潔感が服着て喋ってる』、つまりもう好感度の塊みたいな・・・
③社会人1年目の彼に学んだ、接客力向上のポイント
彼が多趣味でどんな話も幅広くテンポよく出来ます。
勿論、地頭の良さみたいなものはあるかもしれませんが、
それはドラッグストアやカフェで働いて、毎日接客してる人数が多く、年齢が幅広い。
更に言うと、
ドラッグストアは扱う商品が多岐に渡るぶん、
美容や健康、食べ物や薬や日用品など、もう生活全部が詰まってる。
だからちょっとしたネタでちょっとした会話を重ねることができるのです。
そんな接客を日々数をこなすうちにどんどん対応力がついていく。
対応力がついていくということは頭の回転の速さはもちろん、他人に対する自分の魅せ方などもどんどん洗練されていきます。
社会人1年目、まだ半年。
とはいえ年齢じゃないな、と思ったんです。
とくに接客業は、
どんなに幅広い好奇心と向上心を持つか、それで成長の速度が全然違うんだと実感しました。
④あるときは『癒し』になる接客時のお喋り
こんなこともありました。
仕事で嫌なことがあり、気分がモヤモヤしたまま1日ベッドにいた休日。

今日の外出はザグザグだけよ。

まじっすかーw何してたんですか
なんて言いながらザグザグで彼と話したら、そのあと完全に仕事のモヤモヤが消えてました。
完全に消えた、というより『横に置いた』という感じなんだけど、
やっぱり人と話すとリセットされるんですね。いっつも独りなんで知りませんでした
そのとき接客の付加価値みたいなものを実感したんですが、
喋れたら誰でも良いというわけではなくて、

彼は『会話の世界に相手を連れて行ける人』だな
と思ったのです。
つまり、深くても浅くても、長くても短くても
会話に吸引力があり、世界観があり、短い話題にもそれが凝縮されていたら、
相手はそちらに気分を持っていかれるので
さっきあった嫌な出来事から一時的にでも解放されます。
『ああ、なんか元気出た。』
そう思うことで、お店というものはたくさん存在する中でも、
『またあの人のいる店に行こう』と自然になっていくのです。
⑤接客を受けてどんどん『顧客化』されていく『私』の心理
そんなわけで、彼が『店員さん』というより『知り合い』のような、
気が付いたら私の日常に普通に居ました。可愛い甥っ子のように(笑)
世間話しながらも遊び感覚で肌チェックの機器を使ったり、サンプルをもらったり。
彼は距離感も絶妙でした。

もう今日ほんっと疲れてさー
と言うと、一言二言なんてことない会話をして、

じゃ、なんかあったらまた言ってくださいねー、いつでも準備できますからねー
というふうに、『実は相手をよく見ている』ような距離の取り方や詰め方をする。
『今すぐ何か買ってもらおう』というより、細く長い関係を作る、という感じ。
そのうち、

必要なスキンケアは甥っ子のところで買うんだ。
という、一種の”推し活”みたいな(笑)、そんな心境になったりもしました。
そう、接触頻度が高かったり、会話を重ねてるほどつけ込む隙だらけなんです(笑)
商品に関係ある話と関係無い話を繰り返しながらどんどん彼の手中にハマったオバ(私)。
ふと、何気なくお店で彼と話した製品を思い出したらYOUTUBEで調べたりして
日に日に購買意欲を掻き立てられ、

なるほど。これが顧客化と顧客定着心理というやつね。
と、改めて『お客さんから見た顧客化』を体感したのです。
そして私は、半年後には『高い』『そんなに買わない』と思っていた資生堂のキャンペーンの予約をしにカウンター席に座っていました。
さいごに
買い物は、ただモノを手に入れる時間じゃない。
そこには、人と人とのちょっとした交流や、
心を整える“間”のような時間が潜んでいると思います。
彼のように、
一言で空気を変えられる人がいると、
そのお店が“生活の延長”ではなく“気分の回復スポット”に変わる。
接客って、売上や技術だけじゃなくて、「人を前向きにさせる力」なんだと思います。
それは商品知識でもマニュアルでもなく、
相手の心に小さな光を灯すコミュニケーション力。
彼の明るさや誠実さ、そして好奇心に触れて、
私自身もまた“人に優しくありたい”という気持ちを思い出しました。
そして今日もきっと、誰かが彼と話して、
少しだけ心を軽くして帰っているでしょうね。


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